2020.12.28

SNSによるフェイクニュース・インフォデミックへの対応について(半沢正光)

SNSによるフェイクニュース・インフォデミックへの対応について(半沢正光)

SNSによる新型コロナウイルス感染症をめぐるフェイクニュース流通の現状

IT技術とインターネットの進展及びSNSの急速な普及により、情報発信と収集を容易に行う事が可能となっている。この結果、世界の情報流通量は2002年のSARS流行時から68倍に激増し(デロイトトーマツコンサルティング)、新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、インターネット上で真偽問わずあらゆる情報発信がなされ、情報が氾濫・錯綜する「インフォデミック」(注1)時代となっている。

わが国でも、総務省(注2)によれば、新型コロナウイルス感染症に関し、72%の人がフェイクニュース・デマに触れ、77%の人が情報の真偽を判断できていない。

同感染症に関するフェイクニュース・デマを見聞きした人のうち、36%の人が「正しい情報である」等と信じて共有・拡散した。

同感染症に関するフェイクニュース・デマがあたかも真実又は真偽不明の情報として書かれている割合は「Twitter」(57%)とブログやまとめサイト(37%)の割合が高い。

 

SNSによるフェイクニュース・インフォデミック発生の要因

こうしたフェイクニュース流通の急増は以下のSNS特有の拡散メカニズムにより起こっている。

① SNSでは瞬時に1対多の拡散・交流が可能となる。
② SNS利用者の「信用しているや価値観が同じ」人やグループからの情報は信頼されやすく安易な拡散につながりやすい。
③ SNSでの投稿写真・動画イメージや短文のみで情報を判断、投稿内容を吟味せず、フェイクニュースのまま拡散実施される。
④ 一度拡散したフェイクニュースは、ツイッターで拡散が収束後、他のSNSや掲示板などで再び取り上げられ、フェイクニュースが再燃、拡散するケースがある。

 

Withコロナ時代のファクトチェックの推進とSNS運営会社の対応

SNS運営各社の対応

ツイッターは「健康と命に関わる深刻な誤情報」の削除方針を発表、削除対策を実施。
フェイスブックも世界の60超のファクトチェック団体が誤情報と判定した記事を拡散する投稿に警告ラベルを表示。

また、誤った治療法など身体的な危害につながる投稿の削除を実施している。
さらに、ツイッター、フェイスブック両社ともコロナ関係の検索に対し、WHOや官公庁の公式情報へと誘導し正しい情報にアクセスしやすくする取組みも進めている。

 

ファクトチェック

総務省(注2)によれば、ファクトチェックについては、新型コロナウイルスに対する情報についてファクトチェックが積極的に行われることや、SNS事業者がファクトチェック結果をユーザーに届ける必要性を多数の人が感じている。

わが国では、メディアやICT企業が参加するファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)が中心となり、独自の「疑義言説自動収集システム」を開発、情報の真偽を検証するファクトチェック推進がはかられている。

 

Withコロナ時代においてSNSは消費者にとってより重要に

一方、消費者にとり、新型コロナウイルス感染症拡大以降、SNSは一層重要になっている。

① 90%のユーザーが、SNSをこれまで通り利用、もしくは利用時間が増加している。
② 70%のユーザーが、今後「商品やサービスの情報収集、口コミ検索」を目的にSNSを利用したいとしている。
③ 78%のユーザーがSNSを今後も「新型コロナ等に関するニュース等の情報収集」として使いたい。以上は、特にTwitterとInstagramユーザーにその傾向が顕著。(注3)

 

企業にとってのSNSによるフェイクニュース・インフォデミック対策

以上を鑑みると、企業にとっては、フェイク・デマ情報が拡散する前に、以下の実施が肝要であり、早急の実施が望まれる。

① まず、信頼関係の構築。
フェイク情報やネガティブキャンペーンに対し、コーポレートブランディング戦略などを実施、ステークホルダーとの信頼関係を構築する。
② 次に、SNS公式アカウントを開始、ファン・フォロアーを増やす。
SNS上に一定数のファンやフォロワーが育っていれば、フェイク情報が拡散し始めても、即座に誤りであると伝えてくれ、企業の公式情報を伝えることで企業を応援、拡散の可能性がある。
③ 第三に、24時間のフェイク情報監視体制を設ける(難しい場合、専門家・専門会社に依頼)。
④ さらに、フェイクニュースが拡散した場合、そのSNS上で公式情報を発信する。

SNS上でのフェイクニュース・デマ拡散に対しては、フェイクニュースに接している利用者に自社ホームページに公式情報を掲載するとともに、炎上拡散しているSNSと同じツイッターなどのSNS上でないと正しい情報が伝わらないため、同じSNSから発信することが重要である。

 

脚注


(注1) インフォデミックとは、information(情報)とepidemic(伝染病)の2つの言葉を組合わせた造語。真偽のいりまじる情報が不安や恐怖と共に急激に拡散され、社会に混乱をもたらす状況。
(注2) 総務省「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」
【参考】フェイクニュース・デマで接触が高い上位3位の情報(同調査)
「新型コロナウイルスは、中国の研究所で作成された生物兵器である」(38.9%)、「トイレットペーパーは中国産が多いため、新型コロナウイルスの影響でトイレットペーパーが不足する」(30.6%)、
「新型コロナウイルスは熱に弱く、お湯を飲むと予防に効果がある」(29.3%)
(注3) アライドアーキテクツ「新しい生活様式における新型コロナウイルス感染症 拡大以降の消費者のSNS利用実態調査」

 
 
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この記事を書いたライター

半沢 正光

半沢 正光

元三井住友銀行シニアエコノミスト。1979年、三井銀行(現三井住友銀行)入行。ソニーグループや小野田セメント(現太平洋セメント)グループ等のコーポレート担当として、資金調達運用、グループ運営やグローバル戦略などの経営戦略策定に関与。同行調査部で銀行の経営戦略策定やALMを通じたリスクマネジメントを実施。ニューヨーク駐在シニアエコノミストとして、米国経済金融・産業・企業の経営戦略を分析。2014年、一般社団法人日本インフルエンサーズ機構を設立、インフルエンサー育成、企業に対するブランディング・SNSを中心とするWEBマーケティング導入、WEBリスクマネジメント実施アドバイスを実施中。SNSに関する著書2冊。

元三井住友銀行シニアエコノミスト。1979年、三井銀行(現三井住友銀行)入行。ソニーグループや小野田セメント(現太平洋セメント)グループ等のコーポレート担当として、資金調達運用、グループ運営やグローバル戦略などの経営戦略策定に関与。同行調査部で銀行の経営戦略策定やALMを通じたリスクマネジメントを実施。ニューヨーク駐在シニアエコノミストとして、米国経済金融・産業・企業の経営戦略を分析。2014年、一般社団法人日本インフルエンサーズ機構を設立、インフルエンサー育成、企業に対するブランディング・SNSを中心とするWEBマーケティング導入、WEBリスクマネジメント実施アドバイスを実施中。SNSに関する著書2冊。