2021.02.04

話題の疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)まとめ|自民党議員への現金支給/バイデン動画の評価数の操作/マスク効果の画像改変など【1月後半】

まとめ1月

本稿は話題になった疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いのある情報)をまとめて紹介する企画である。

1月後半は自民党議員への200万円支給やバイデン動画の低評価の操作、マスク効果の画像改変に関する話題が確認された。概要と検証結果、企業が学ぶべきポイントを解説する。

なお、発行元のデジタル・クライシス総合研究所はファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しており、この記事はFIJのレーティング基準に基づいて作成したものである。

※当サイト及び他のメディアにてファクトチェックが行われた情報をもとに作成。

 

話題になった疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)

・自民党議員に税金から200万円支給
・バイデン動画の不人気さをマズいと思ったのか、YouTubeが低評価の数字を操作
・[画像]不織布、布、ウレタンマスクの効果比較の改変画像

「自民党議員に税金から200万円支給、申請不要で即時振り込み」

自民党所属議員に対して、申請不要で税金から200万円ずつ支給されているというNEWSポストセブンの記事がTwitterで拡散した事案である。

1
Twitterより

概要

日付:1月23日
発信者:NEWSポストセブン
媒体:Twitter
拡散数:Twitter上で1,300以上RT
内容:「自民党議員に税金から200万円支給、申請不要で即時振り込み」とのNEWSポストセブンの記事がTwitterに投稿され拡散

 

検証結果

【検証】

「自民党議員に税金から200万円支給、申請不要で即時振り込み」はミスリード

Newsポストセブンが報じた「自民党議員に税金から200万円支給、申請不要で即時振り込み」という記事がTwitterで拡散し、「議員ファースト」「不平等」「恥ずかしくないのか」などと批判的な反応がみられた。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一都三県に緊急事態宣言が発令されているさなかであったことから批判につながったとみられるが、この記事がサイトにアップされたのは2020年6月12日であり、支給されたのは2020年5月26日だ。

この時期に世間で起きていたことといえば全国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」や、収入が大きく減った中小企業に対して最大200万円を支給する「持続化給付金」の給付だった。
両者とも、手続きから支給まで時間がかかっている地域が多く、不満の声が上がっていた。

同じようなタイミングで自民党議員に支給された200万円とはこれらとは何の関係もない「政党交付金」で、国会議員全員が支給対象であるため野党議員も受け取っている。

国民民主党では交付金とともに解党に伴う事務費用や総選挙に向けた応援資金を合わせた1,000万円を支給しており、交付金の支給方法は各党本部が決められる。
自民党は通年年6回に分けて支給しているうちの1回がこのタイミングで支給された格好となった。

「特別定額給付金」や「持続化給付金」とは違い、通年支給される交付金であるため、確かに申請不要で指定された口座に即時振込される。

国会議員全員が支給対象であり野党議員も受け取っているため、「自民党議員に税金から200万円支給、申請不要で即時振り込み」はミスリードと判定した。

 

疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)に対する編集部考察

今回のケースは記事の書き方に加え、投稿のタイミングも拡散の原因の非筒と考えられる。

政党交付金は与党・野党にかかわらず国会議員であれば全員に支給されるものだ。
政党交付金に対し批判的な記事を書くことは自由だが、書くのであれば全党の支給状況を掲載しなければフェアとは言い難い。

また、半月以上も前の記事をこのタイミングでTwitterに投稿することも何かしらの意図が感じられる。

これは企業も注意が必要だ。ネットには様々な情報があり、いつでも見ることができるため、思いがけない形で過去の情報が注目を集めることもある。
多くの人は見出しだけで判断してしまうため、無関係な情報が関連付けられて発信されてしまい、事実として浸透してしまうのだ。日常的なモニタリングと早いタイミングでの公式見解の発表で防いでいくことが必要だろう。

 

バイデン動画の不人気さをマズいと思ったのか、YouTubeが低評価の数字を操作

バイデン大統領の動画についてYouTubeが低評価の数字を操作していると投稿、拡散した事案である。

2
Twitterより

概要

日付:1月22日
発信者:匿名
媒体:Twitter
拡散数:Twitter上で2,300件以上RT
内容:「バイデン動画の不人気さをマズいと思ったのか、YouTubeが低評価の数字を操作している」という投稿が拡散

 

検証結果

【検証】

「バイデン動画の不人気さをマズいと思ったのか、YouTubeが低評価の数字を操作」は誤り

発信者はバイデン大統領が出演した動画のスクリーンショットを並べ、時間の経過とともに“低評価”の数字が減っていることを指摘、YouTubeが数字を操作していると非難した。

並べられたスクリーンショットは2種類で、一つは9,000から4,800、もう一つの動画は11,000から4,400へ“低評価”の数が減っていることがわかる。

数字だけを見ると確かにYouTubeが“低評価”の数字を操作しているように受け取れるが、これはYouTubeの機能の一つであって数字を操作しているわけではない。

YouTubeでは投稿された動画に対し視聴者が「高評価(like)」「低評価(Dislike)」のどちらかの評価を付けられる機能がある。評価を付けた本人であれば後に付け直しも可能だ。

ところが、中には動画を視聴せずに評価を付ける行為を繰り返す視聴者がおり問題となっていた。そのためYouTubeでは「動画を視聴せずにクリックされた評価」については48時間以内に調整するものとしている。
バイデン大統領の動画について、“低評価”の数が減っているのはこの機能が働いているためだ。
これは投稿者が気に入らないために投稿を再生せずに“低評価”とする「低評価モブ」への対抗手段であり、政治的な意図はない。

 

疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)に対する編集部考察

今回は企業にも関連のある事案である。
企業PRや商品紹介などで動画を活用することは一般的となりつつあり、再生回数とともに気になるのが評価だろう。YouTubeでは「動画を視聴せずにクリックされた評価」については48時間以内に調整しているため、動画をみた人の評価が正しく反映されているといえる。当然ながら高評価が多ければ成功と判断できるが、低評価が多い場合には原因を探る必要が出てくる。

YouTubeの評価機能では評価そのものをOFFにすることも可能ではあるが、それでは根本的解決にはならないだろう。低評価を付けるには何かしら理由があるとも考えられるからだ。

企業活動としてツールを活用する際にはこういった意見に対してどういう向き合う必要があるのかよく検討しておかなくてはならない。

 

[画像] 不織布、布、ウレタンマスクの効果比較の改変画像

不織布、布、ウレタンマスクの効果を比較し、「不織布マスクの効果が低いとする比較画像」が投稿された事案である。


Twitterより

概要

日付:1月21日
発信者:匿名
媒体:Twitter
拡散数:Twitter上で210RT
内容:「マスコミが不織布マスクをゴリ押ししているのは不織布マスクの値崩れに困った企業を助けるため」として、マスクの素材別に効果を比較した画像をTwitterに投稿

 

検証結果

【検証】

「不織布マスクの効果が低いとする比較画像」は誤り

発信者は、布、ウレタンに比べ不織布マスクの飛沫対策効果が薄いとする画像とともに「マスゴミが不織布マスクをゴリ押ししてるけど不織布マスクの値崩れで困った支 那企業を助ける為だと言うと陰謀論って批判されるのかな? #知らんけど #不織布マスク警察」と投稿し、批判した。

添付された画像では吐き出し飛沫量・吸い込み飛沫量ともにウレタン、布、不織布マスクの順に効果が高いとされており、不織布マスクの効果が低いにもかかわらず不織布マスクを勧めるマスコミの姿勢に疑問を投じている。

これに対し、添付された画像は改変されたものだと主張する投稿がみられた。

4
Twitterより

「加工したデマ画像に釣られてんのかわざとなのか知らんけど
ANNニュースが元ネタでこれスクショの画像だよ。
悪質だよね。勝手に図表改変して流布とか法に触れるの知らんのと違うかな。」

この投稿に添付されていた動画には、発信者の投稿内容と同様の図表が出てくるが、素材ごとのマスクの効果を表す数字が全く違う。一番効果が高い不織布マスクと、一番効果の低いウレタンマスクの数字が入れ替わっているのだ。

発信者がこの事実を知った上で投稿したのかは分かりかねるが、素材ごとのマスクの効果を比較した画像については誤りといえる。

 

疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)に対する編集部考察

今回のケースはマスクの素材についての投稿だが、注意しなければならないのが投稿に添えられていた画像だ。指摘されているように、元となったデータはANNニュースで流れた動画だが、投稿者はそのことについては触れていない。
根拠の元となるデータの出どころを明らかにしないまま批判しているが、それを指摘する人はほとんどおらず、多くの人が同調している。
一部正しいデータを持ち出し数字に誤りがあることを指摘する人がいたが、発信者自身が加工された画像について知らずに流用したのか、もしくは意図的に添付したのかは定かでない。

これは企業も注意が必要だ。

投稿された動画や画像は誰でも簡単に加工ができるため、知らないうちに誤った情報を発信していると誤解を受けてしまう可能性がある。もし企業が被害に遭ってしまった場合には迅速な対応が求められるだろう。

 

 
 
※シエンプレが扱うSNS・WEBモニタリングサービスの概要資料は以下からダウンロードできます。
 
 


 

SNS/WEBモニタリングサービスの概要資料

 


この記事を書いたライター

編集部

編集部