「町議会議員が飲み屋でコロナに感染した」爆サイ.comの地域情報スレッドから虚偽の情報が広がった要因と対策
日本のSNS人口は、2022年に8241万人に到達するといわれている。
インターネット人口の増加にともない、デマ・フェイクニュースも増加の一途をたどっており、昨年、総務省が行った「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」によると、2000人中の1440人、全体の72%もの人がコロナ関連のフェイクニュース・デマ情報を目にしたという調査結果が出ている。
「町議が飲み屋でコロナに感染した」
2021年5月、このような虚偽の情報がネット掲示板に書き込まれ、町議会議員が警察署に被害届を提出した。
事件の概要や誤情報が広がった要因、企業としてすべき対策などについて考察したい。
事件の概要
事件は、「爆サイ.com」の書き込みが発端となった。
「爆サイ.com」は、匿名性の巨大インターネット掲示板である。2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)や、したらば掲示板などとの大きな違いは、地域密着型の口コミサイトということ。
北海道から沖縄までの各都道府県、さらに市町村別の掲示板が存在し、その地域に住んでいなければわからないようなローカルな話題が匿名で書き込まれ、盛り上がっている。
「町議が飲み屋でコロナに感染した」。この虚偽の書き込みは、同サイトの「大河原町コロナ」というスレッドにあった。
デマが広がった要因
宮城県大河原町で5月にクラスターが3件発生し、県は、同月10日にクラスターが発生した飲食店名を公開した。それ以降、「大河原町コロナ」のスレッドに書き込みが急増し、大河原町議会議員を名指しするような投稿が散見されるようになった。
※爆サイ.comのスレッド「大河原コロナ」への書き込み
さらに、クラスターが起きた飲食店で町議が接待を受けていたという書き込みがあり、そのコメントに同調する書き込みが続いた。町議を目撃したという書き込みは、似た人物を見ただけだったのか、もしくはだだの嫌がらせ、悪ふざけとしかいえない。
また、「重点措置中に地元の役人が接待を伴う飲食店でコロナ感染。そりゃ町も全力で隠したいよなぁ」といった、町議の特権で感染が公にされていないという趣旨の書き込みも複数あった。
町議が行った対策
町議はクラスターが発生した飲食店に訪れたことがない。もちろんコロナウイルスに感染しておらず、濃厚接触者でもない。
町議会議員は人前に立つ仕事ということもあり、多少の誹謗中傷は目を瞑らないといけないのかもしれない。しかし、身近な知人から感染の噂について尋ねられるようになったという。このままでは家族の生活や議員活動への弊害になると考え、町議は警察署に被害届を提出。そして受理された。
企業の対策として注目すべき点
この事案で注目したいポイントは2つある。1つは、対策として警察署に被害届を提出したことである。被害届が受理されれば、捜査の端緒(きっかけ)となり、捜査の結果によっては、書き込んだ人間は刑事処分となる。
被害届を提出することにより、自身が潔白であることの証明だけでなく、悪質な書き込みやデマの拡散を抑制することができるのだ。
もう1つは、デマ情報の発生元が地域に特化したローカルコミュニティーサイトだったということ。地域を限定した掲示板は、その地域に住んでいなけばわからないような店や個人情報に関する書き込みが野放し状態となっている。
まとめ
企業の信用を失墜させるフェイクニュース、デマ情報対策として、TwitterやFacebookなどの主要なSNSだけでなく、こうしたローカルサイトや地域情報アプリなども監査の対象とすることも今後、重要となってくる。なぜなら、世界のインターネット環境や技術、システムの向上にともない、これからも次々と新規のサイトやアプリ、サービスがリリースされていくからである。
書き込み後すぐに発見できれば発信者情報開示請求が可能なケースもあるが、時間が経過してしまうとサイト側がログを消去してしまい開示請求ができなくなることもある。発見後の対応も視野に入れた上で監視の頻度を検討すべきである。
企業名でのエゴサーチを週1回ほどの頻度で行うだけでなく、SNS運用ガイドラインの制定や従業員自身がプライベートでも誤解を生むような書き込みをしないよう、リテラシーの強化に注力することをおすすめしたい。
※シエンプレが扱うSNS・WEBモニタリングサービスの概要資料は以下からダウンロードできます。