「デジタル・クライシス白書2021」から考察する 疑義言説・フェイクニュースの発生数と傾向調査
新型コロナウイルス感染症の影響により、自粛・緊張状態が続いた2020年。
2020年も多くのフェイクニュース・炎上事案が発生した。
今回は、弊社が2021年1月20日刊行した「デジタル・クライシス白書2021」を基に1年間の疑義言説の発生件数やその傾向を調査した。
デジタル・クライシス白書について
ソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向や論調などを調査、分析した弊社刊行の資料である。
調査概要
■調査媒体:FIJ保有の疑義言説データベース「ClaimMonitor2」を使用
■調査期間:2020年1月~2020年12月
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)とは
ファクトチェックとは、社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化し、正確な情報を共有する「真偽検証」のこと。
FIJは、このファクトチェックを日本に普及させる普及活動を行う非営利団体である。
2020年に発生した疑義言説の件数
2020年に発生した疑義言説は合計で2,615件。1日平均7.2件発生していることが分かった。
最も件数が多いのは4月で286件、2番目が3月234件と11月234件という結果に。
※「デジタル・クライシス白書2021」より引用
何を主体とした疑義言説の件数が多いかを分析した結果、1位が「新型コロナウイルス」で2,615件中の1,110件。新型コロナウイルスを主体としたフェイクニュースが圧倒的に多いことが分かる。
炎上・話題となったフェイクニュース
新型コロナウイルス関連で大きな話題になったフェイクニュースとしては、以下が挙げられる。
「トイレットペーパーはマスクと同様に中国産が多いため、品薄になる」
「中国の研究所で作成された⽣物兵器である」
「新型コロナウイルスは熱に弱く、お湯を飲むと予防に効果がある」
「納⾖を⾷べると新型コロナウイルス予防に効果がある」
トイレットペーパーの事例に関しては、デマを信じ、トイレットペーパーを買い溜めする消費者もいた。一部の消費者が買い溜めしたことにより、品薄になる店舗が続出。しかし、実際は品薄ではなく、過剰在庫を店頭に置かないという、日本の流通システムによるものだった。
店頭で品薄になっている光景を目にした消費者がフェイクニュースを信じた、またはデマだと分かっていても在庫がなくなる不安から買い溜めを助長したと推測できる。
以前、記事にしたように、フェイクニュースだと完全に見抜けるユーザーは多くはない。誰しもが疑義言説に騙されてしまう可能性があるのだ。
疑義言説の内訳
新型コロナウイルス以外のフェイクニュースの主体は、2位「アメリカ大統領選」164件。3位「大阪都構想・住民投票」60件。4位は「中国」57件という結果となった。
※「デジタル・クライシス白書2021」より引用
2021年のデジタル・クライシス予測
2020年のデジタル・クライシス白書で注目したいのが、コロナ禍において炎上件数が一時的に前年同月比3.4倍にまで増加したということである。
その背景には、自粛生活でSNS利用時間が増加したということと、社会全体が不安になったということ考えられる。
未曾有の感染症ショックに見舞われた2020年は、「新型コロナウイルス関連」という新しい形態の炎上が増加したこともあり、炎上発生件数が前年比15.23%増加という結果となった。
また、炎上を週1回以上認知している人は5割以上という結果も出た。
この2点の事実から、炎上がより身近になった1年だったと言えるのではないだろうか。
最新の論調把握と迅速な対応、そして適切な対処が必須
2021年も生活・働き方・メンタルの変化によって新しいリスクが登場する一年になる可能性が高い。
世の中のトレンドを今まで以上に注視し、「ニューノーマル」を捉え、自社の危機管理体制が砂上の楼閣とならぬよう、見直す必要がありそうだ。
2021年は、「afterコロナではなくwithコロナ」と気付いた社会の中で、引き続き企業は様々な対応を迫られることになるだろう。
目まぐるしく変化するユーザー心理や論調を把握し、その都度で状況を見極め正しい判断を下していくことが必要だ。
近々刊行予定の「デジタル・クライシス白書2022」が判断基準の一助となれば幸いである。