2021.05.28

「茨城県境町家族殺傷事件の犯人と同市の市議会議員らが親戚」という誤情報はなぜ拡散されたのか~要因と対策

「茨城県境町家族殺傷事件の犯人と同市の市議会議員らが親戚」という誤情報はなぜ拡散されたのか~要因と対策

2017年6月、「東名高速道路あおり運転事故」によりあおり運転が社会問題となったが、同時にインターネット上の誤情報も問題視されメディアに取り上げられる機会が増加した。

東名高速の事件では、事件とは全く無関係の建設会社社長が「容疑者の父親」だと誤認され、所謂「電凸」と呼ばれる嫌がらせの電話が殺到する事態に発展した。情報源や根拠が不明確な情報であってもSNSを通じて拡散してしまうと手のつけようがないという誤情報の怖さが際立った事件だったと言える。

2019年8月に起こった茨城県守谷市の「常磐自動車道あおり運転殴打事件」でも無関係の人物が犯人扱いされた。そして今月、「茨城県境町の家族殺傷事件」において無関係の人物が犯人の親戚であるという虚偽の情報が拡散される事案が発生してしまった。

我々は、一つの事象から飛び火して別の個人や企業へ被害が及ぶことから「飛び火炎上」「飛び火デマ」と呼んでいるが、今や社会問題となっているこの「飛び火炎上」にどのように備えればよいのだろうか。「茨城県境町の家族殺傷事件」の概要、デマが拡散された要因から対策までを分析した。

 

事件の概要

2019年9月、茨城県境町で会社員の小林光則さん(当時48歳)と妻の美和さん(当時50歳)が刺殺され、子ども2人が重軽傷を負う痛ましい事件が起こった。事件の2年後となる2021年5月7日、茨城県警は埼玉県三郷市に住む無職・岡庭由征容疑者(26)を殺人容疑で逮捕。

岡庭由征容疑者が逮捕された7日頃から、容疑者と同市で同性の男性市議と建設会社の代表を務める市議の長男が「犯人の親戚である」いうで虚偽の情報がネット上で拡散された。

犯人が逮捕された7日の午後には、ネットでの誹謗中傷や市議の自宅や長男の会社に「殺人犯の親戚なのか」「死ね」といった脅迫電話や無言電話がかかるようになり、その数は200~300件に上った。

拡散された要因

「犯人の親戚である」という誤情報が拡散された要因としては、犯人が住む埼玉県三郷市には、岡庭という姓が多く、犯人の実家は広大な敷地に建てられていることから、資産家一家なのではないかという憶測がネットに上がっていたことが考えられる。
虚偽の情報は市議の写真とともにまとめサイトに掲載され、まとめサイトをもとにTwitterなどのSNSで拡散された。

茨城県境町家族殺傷事件のリツイート画像
まとめサイト、いわゆるトレンドブログは、アクセス数が多ければ多いほど大きな収入を得られるため、ネットビジネスとして近年注目されており、匿名で運営できる。アクセス数を集めるためには、話題のトピックをいち早くネットに公開する必要があるため、虚偽の情報であっても早々にアップされ、それゆえに拡散スピードも早い。

茨城県境町家族殺傷事件に関係するトレンドブログの画像

トレンドブログの一部

実際に「犯人の親戚である」と記載した内容のトレンドブログは当初20サイトほど存在した。

対策

誹謗中傷がはじまった翌日8日には、市議らはまとめサイトなどに対し、謝罪と訂正を求め、10日には、自身の公式サイトに「岡庭由征容疑者の報道に関して」とする文書を公表し、事実無根であるという声明を出した。

 

岡庭由征容疑者の報道に関しての声明文の画像

出典:三郷市議会議員 岡庭明オフィシャルサイト

すでに警察に相談していることや虚偽の情報の拡散には法的手段をとることなどを明記したところ、該当記事は削除され、いたずら電話はほぼなくなったという。

しかし、Twitterには現在も一部のツイートが残っており、関係者は7月の市議会議員選挙への影響を危惧しているという。

フェイクニュースの拡散を助長する「まとめサイト」対策とは

本件のようにデマ・憶測・フェイクニュースが拡散されてしまう要因として「まとめサイト」の存在は大きい。副業として開設する人も多く、サイト数は右肩上がりだ。

企業としてのフェイクニュース対策として、まとめサイトやそのTwitterアカウントを定期的にウォッチし、早期発見ができる体制の構築することが重要である。

最低限、企業名・社長名・商品名・屋号を収集ツールに登録して急激な投稿数の増加や危険ワードが含まれた投稿が検知された際に把握できるようにしておく必要がある。指定のアドレスにアラートが飛ぶように設定できる「アラート機能」が備わっている収集ツールを利用するとより迅速に把握できるだろう。

また、事件の発生から24時間以内にテレビなどでの放映・記事化がされるため(デジタル・クライシス総合研究所調べ)、企業公式の声明や検証記事の公開は24時間以内での対応がベストといえる。