2020.10.01

産経新聞が記事化した 「『鹿せんべい依存症』の兆候、観光客減で激やせのシカ」はミスリード

産経新聞が記事化した 「『鹿せんべい依存症』の兆候、観光客減で激やせのシカ」はミスリード

9月24日、産経新聞から「「鹿せんべい依存症」の兆候、観光客減で激やせのシカ」というタイトルの記事が公開された。Twitter上で拡散し、2万件のいいねを獲得している。調査を行った結果、観光客が要因で痩せているとは断定できないため、ミスリードであると判定した。

なお、産経新聞の記事はタイトルが修正されているが、ツイート内に記載されている記事タイトルは修正されておらず(9/30 12:40時点)誤解を招く可能性があるため、記事化した。

以下、今回の事象について概要及び調査結果を記載している。なお、発行元のデジタル・クライシス総合研究所はファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しており、この記事はFIJのレーティング基準に基づいて作成したものである。

 

ファクトチェックの対象

新型コロナウイルスの影響で観光客が減少したことにより「鹿せんべい」への依存から抜け出せずやせ細る鹿がいる。
「鹿せんべい依存症」の兆候、観光客減で激やせのシカ と題する記事をシェア
(9/24 11:00産経新聞が記事化)

 

結論
【ミスリード】やせ細った鹿の画像が添付されているが、1匹のみであり個別の事象なのか全体的な事象なのかが判断できない。また、調査を行った結果、観光客以外の要因(病気など)も考えられることが分かったため、ツイート内に記載されている「観光客減で激やせのシカ」という表現はミスリードであると判定した。

 

拡散源

対象の媒体:産経新聞
対象URL:https://www.sankei.com/premium/photos/200924/prm2009240001-p1.html
対象ツイートURL:https://twitter.com/Sankei_news/status/1308951910657875970
投稿日:9月24日 11:00
拡散量(9/30 12:40時点):RT1.2万、引用ツイート3,246、いいね2.1万

 

産経新聞のWebサイトで公開された記事の画像

産経新聞の記事画像

 

産経新聞の公式Twitterから投稿されたツイートの画像

産経新聞のツイート画像

新型コロナウイルスの影響で観光客が減少したことにより「鹿せんべい」への依存から抜け出せずやせ細る鹿がいると結論づける内容であった。54.6万人のフォロワーを持つアカウントから投稿され、約1.2万件のRTが確認されている。

 

拡散した要因としては、ライブドアニュースに転載されたことで1.6万件のRTがされていること、めざましテレビにて放映され露出度が高まったことが考えられる。また、以下のように反論を記載したツイートが700件以上RTされていることも確認できた。

https://twitter.com/Cho880717/status/1308979603546013698

 

拡散経路や時系列の動き

産経新聞のWebサイト内で記事が公開された後、産経新聞の公式Twitterアカウントにてツイートがされている。当該ツイートは1万件以上RTされているため、このツイートが拡散のきっかけになっていると思われる。

9月24日 11:00 産経新聞で記事化(Web)
9月24日 11:10 産経新聞の公式Twitterに投稿される
9月24日 11:54 ライブドアニュースに転載される
9月24日 15:34 BuzzFeedJapanの記者がツイート
9月25日 05:25~ めざましテレビで放映される

デジタル・クライシス総合研究所が発表している「デジタル・クライシス白書2020」の中で炎上の原因となる内容が記事化されてからマスメディアに取り上げられるまでのスピードは48時間以内が5割という結果がでている。本件においては記事化されてからテレビに取り上げられるまでが約18時間となっており、特にアウトプットが早い傾向がみられた。

 

投稿分析

「鹿せんべい」AND「観光客」「激ヤセ」「激やせ」で検索を行い、拡散されている投稿やキーワードを調査した。

 

調査概要

■調査ツール:TDSE提供のソーシャルアナリティクスツール「Netbase」を使用
■調査対象:産経新聞が記事化した鹿せんべいによる影響に関する投稿
■調査キーワード:「鹿せんべい」AND「観光客」「激ヤセ」「激やせ」
■調査期間:9/20~9/30
■Twitterデータ:Decahoseデータを100%にスケーリングして使用(※)
■取得言語:日本語

※Decahoseとは、ツイートデータの10分の1の母集団のこと。10分の1のデータを実態に近い数値にスケーリング(拡張)して調査。
※その他の仕様は「Netbase」の仕様に準拠。

 

以下は投稿数推移であり、24日に投稿数が増加して、ポジティブな感情よりもネガティブな感情が多くなっていることが分かる。

 

鹿せんべいの投稿数推移

※調査概要を基に編集部作成

 

拡散ツイート

9/24の11時に記事が発表されており、その後15時頃に有名ネットニュースメディアの記者が当該ニュースに言及したツイートをしている。

リツイートは388、いいねは368となっており多くはないが、ツイート内で「《以前の調査では、せんべいを1日200枚以上食べていたシカもおり、「人から餌をもらって食べるのが当たり前になって、環境の変化に適応できないのかもしれない」と立沢助教は推測する》」という部分を引用しており、事実関係について言及する内容はみられていない。

鹿せんべいに関するツイート

なお、当該アカウントのフォロワーは3.2万人となっており、多くの人の目に触れたと予測できる。その後は大きくエンゲージメントが伸びている投稿は見られていない。

 

サイト別分析

掲示板に絞って確認すると、「爆サイ」と「ガールズちゃんねる」で関連投稿が多く確認された。爆サイは、9/24 18:26に「「鹿せんべい依存症」の兆候、観光客減で激やせのシカ」というスレッドが立ち上がっており、ガールズちゃんねるは9/24 14:41に「「鹿せんべい依存症」の兆候、観光客減で激やせのシカ」というスレッドが立ち上がっている。いずれも数百件のコメントが確認されている。以下が調査概要を基に作成したサイト別の投稿数グラフである。

 

鹿せんべいのグラフ2

※調査概要を基に編集部作成

 

なお、ガールズちゃんねるには「地元なんで先月散歩に行きましたけど画像のような鹿🦌は見ませんでした」「奈良県民ですおまけにこの近くで働いてます鹿はちゃんと決まった時間に餌もらってるので大丈夫ですよ痩せた鹿も丸い鹿も何年も前からいます」などの端緒情報が記載されており、事実関係の確認や様々な意見を流通させるという観点で有効な媒体であると考えられる。

 

調査結果詳細

記事内で紹介されている北海道大学の立澤史郎教授のFacebookでは以下のように補足がされている。

こういう激ヤセ個体は極めて少なく(7-800頭中の20頭程度)、しかも主因はシカ煎餅がもらえないことでなくもっと蓄積的な理由(異物の誤食・疾病・怪我・高齢)が考えられること、をディレクターさんがどれだけ頑張って伝えてくれるか、恐怖津々?です(^^;)。ちなみに私は「鹿せんべい依存症」とは言ってないはず・・(;_;)。

引用:北海道大学の立澤史郎教授のFacebook

痩せていることの主因は鹿せんべいではなく別の理由が考えらるという内容が記載されており、ツイート内に記載されている記事タイトルに含まれる「観光客減で激やせのシカ」という表現はミスリードであると判定した。

 

結論

ツイートのコメント欄には「この痩せ細った姿は見てて辛い」「痩せ過ぎて切ない…」などの意見があり、観光客の減少による鹿せんべい摂取量の減少がやせ細った原因だと誤解をしている人が見られた。

調査の結果、

①激やせ固定は極めて少ない

②激やせの主因は別にある

③観光客が少ないことで良い影響がある

 

ということが分かった。

産経新聞のツイートに対するリプライやガールズちゃんねるの投稿を確認すると立澤史郎教授の主張を裏付ける画像や動画、テキスト情報が多数存在していることを確認した。

当該ツイートに関しては、その他の要因には言及されておらず、コメント欄においても誤解をしている人が複数見られることから、「観光客減で激やせのシカ」という表現はミスリードであると判定した。
 
 
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