個人や企業の言動が大量の批判にさらされる炎上。社会的な評価や業績にまで影響を及ぼすケースもある。

大量の批判が広がる「炎上」のような状態は、ネットが生まれる前からあった。しかし、誰もが情報を受発信し、拡散できるネットとスマホとソーシャルメディアの時代に、その発生率や拡散力は圧倒的に高まっている。

先日、シエンプレ主催の炎上対策ランチタイムウェビナーで「フェイクを見極め、炎上を防ぐ盾を持つ」と題して講演をした。なぜ、フェイクと炎上を絡めて語るのか、新しいデータも交えつつ、改めて振り返りたいと思う。

まずは、デジタル時代の炎上のメカニズムから見てみる。

炎上は定型的「だった」

典型的な炎上は、以下のようなプロセスで発生してきた。

1.火種がネットに上がる

個人や企業の言動、サービス、商品、過去の発言の文字起こしなど形態は様々。

 

2.拡散とともに批判が広がる

アイスクリームケースに入ったり、線路に横たわったりという明らかな問題行為で最初から批判が燃え上がるケースもあれば、特定コミュニティの中では問題視されなかった言動がコミュニティを超えて広がることで意見の異なる人達から批判が拡大していくケースもある。

 

3.「○○が炎上」などとネットメディアなどが掲載

ネットメディアや個人ブログ、YouTubeなどが、批判が広がり始めた情報を取り上げてコンテンツ化すると、拡散力が増す。特に有名企業や個人の場合は、ちょっとした批判だけでもPV狙いで「炎上」と表現するメディアがある。

 

4.ヤフー掲載やソーシャル拡散などで議論が拡大

コンテンツが出てくることでソーシャルで拡散しやすくなり、さらにヤフーなどの集客力が非常に大きいプラットフォームに乗ることなどが拡散を加速させる。

 

5.新聞・テレビが報じて影響力が高まる

ネット時代とはいえ、特にテレビの影響力は非常に大きい。特に炎上ネタなどは比較的視聴率が高い情報番組/ワイドショーなどで取り上げられる傾向があり、テレビ放送でのコメンテーターの発言をネットメディアが取り上げるループ構造も生まれてしまう。

 

新聞・テレビの「ネットメディア化」

以上が、典型的なメカニズムである。過去形で語るのは近年、新聞やテレビや雑誌の「ネットメディア化」とも呼べる現象が生まれることでこのプロセスに変化が生じているからだ。

各社ともにデジタル発信にも力を入れるようになり、PVを気にするようになった。その結果、ネット専業メディアが掲載するのと同じようなスピードや感覚で「炎上ネタ」を取り上げるケースも出てきた。「炎上をニュースにする」というよりも、「ニュースが炎上を生み出す」状況が一部で加速している。

日本ではすでに1億人がインターネットに触れている。Twitterの月間アクティブユーザーは2017年の発表で4500万。論争的な内容に触れれば、一定数の批判が来るのは当然だが、批判が数十件のレベルでも記事化し、それがきっかけで批判数が大きく増えるようなケースだ。

ネット×スマホ×ソーシャルによる情報の洪水に続いて、伝統的なマスメディアのネットメディア化によって、炎上はさらに加速している。では、炎上を未然に防ぎ、批判が押し寄せた時に冷静に対処するために何が必要か。ここで「フェイク」に関する知見も重要になってくる。

 

「フェイク」はなぜ広がるのか

2016年のアメリカ大統領選から世界的に注目を集めるようになった「フェイクニュース」という言葉は、この問題の専門家たちの間では評判が悪く、あまり使わない。トランプ大統領のように、自分の気に食わない情報を発信するメディアに対するレッテル貼りに使われるケースが目立つうえに「偽のニュース」という言葉が、問題を「ニュース」だけに矮小化してしまうからである。

現実的には誤った情報(誤情報=misinformation)や、相手を騙す意図のある偽の情報(偽情報=disinformation)は、ニュースだけではなく個人のネット上の書き込みやツイート、広告やエンターテイメントなど、あらゆるものを汚染している。

マスメディアが情報の流通を独占していた時代にも、マスメディア自身が誤った情報やミスリーディングな情報を流すことはあった。しかし、明らかに間違っている情報などは、指摘されればそのメディア自体のダメージとなるため、一定の品質管理がなされていた。

しかし、誰もが実名でも匿名でも発信できる現状では、このような品質管理は成立せず、むしろ、派手な嘘や、話を面白く膨らませたほうが注目を集めるという負のインセンティブが働いてしまう。これが「フェイク」の蔓延につながってしまった。

 

祭りへの参加と「フェイク」

ネットニュース編集者として様々な炎上事案を記事にしてきた中川淳一郎さんは著作「ウェブを炎上させるイタい人たち」の中で、炎上参加者のモチベーションを分析している。「義憤」や「不満」、「マウンティング」や「祭り」への便乗などである。

炎上のメカニズムは変化しても、参加するモチベーションは変わらない。当然、聞くべき筋の通った批判もあるが、一方で、義憤や不満は怒りから、マウンティングは自分の知識量を見せつけるために、祭りへの参加感は面白がるために、それぞれ不正確な情報であっても書き込んでしまうケースが発生する。

そこに相手への憎しみが交じると、負のスパイラルを生み出す。ヘイトからフェイク混じりの情報を共有し、派手なフェイクでヘイトを掻き立てられると、フェイクを信じやすい下地が生まれるという無限ループである。

 

「炎上」と「フェイク」を予測する

自分たちの言動が間違っていたのであれば筋の通った批判に対して、すぐに謝罪したり、訂正したりする必要がある。しかし、批判の中にフェイクが混じっている場合にどうすべきなのか。

炎上やフェイクにはメカニズムがあり、パターンがある。論争的なトピックに踏み込めば、必ず批判もくる。それを理解した上で、何をどこまで対応すべきかを考えておく必要がある。

例えば、3rd Opinionでも取り上げた「【SNS分析】NikeのCMは「炎上」なのか?データから広報・マーケ担当が学ぶべきことを考察」。日本における在日コリアンや人種差別をテーマにしたCMに寄せられた称賛や批判について分析している。

批判の中には筋が通っている指摘もあれば、憶測に基づくものや不正確なものもあった。Nikeの担当者はそれらをある程度は予想していたであろう。日本にとってそれだけ論争を呼ぶことが予想されるテーマだからだ。「Nikeが炎上」という記事も大量に書かれた。

しかし、NikeのこのCM動画はYouTubeで1000万回再生を超え、今も削除されていない。何をもって対応すべき「炎上」とみなすのか。Nikeの判断がそこに現れている。
 
 
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この記事を書いたライター

古田 大輔

古田 大輔

株式会社メディアコラボ 代表取締役  古田 大輔 氏(ふるた だいすけ) 1977年福岡生まれ、早稲田大政経学部卒。2002年朝日新聞入社。 社会部などを経て、アジア総局員、シンガポール支局長。 帰国後はデジタル版を担当。 2015年10月に退社し、BuzzFeed Japan創刊編集長に就任。2019年6月に独立し、 株式会社メディアコラボを設立。フリーランスのジャーナリスト/メディアコンサルタントに。 その他の役職に、インターネットメディア協会理事、ファクトチェック・イニシアティブ理事、Online News Association Japanオーガナイザー、早稲田大院政治学研究科非常勤講師など。共著に「フェイクと憎悪」など。

株式会社メディアコラボ 代表取締役  古田 大輔 氏(ふるた だいすけ) 1977年福岡生まれ、早稲田大政経学部卒。2002年朝日新聞入社。 社会部などを経て、アジア総局員、シンガポール支局長。 帰国後はデジタル版を担当。 2015年10月に退社し、BuzzFeed Japan創刊編集長に就任。2019年6月に独立し、 株式会社メディアコラボを設立。フリーランスのジャーナリスト/メディアコンサルタントに。 その他の役職に、インターネットメディア協会理事、ファクトチェック・イニシアティブ理事、Online News Association Japanオーガナイザー、早稲田大院政治学研究科非常勤講師など。共著に「フェイクと憎悪」など。