2021.09.27

フェイクニュースが原因で世界の仮想通貨が変動 誤情報を見極めるための方法・対策とは

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フェイクニュースが原因で実際に経済に影響が出た事例が発生した。なぜ、多くの人がフェイクニュースを信じてしまったのか。その要因やフェイクニュースに惑わされないための対策について思考したい。

偽のニュースリリースを大手メディアが配信

問題のフェイクニュースは、「アメリカの小売り大手のウォルマートが暗号資産(仮想通貨)のライトコインと提携し、支払いにライトコインの利用を認める」というものだった。

9月13日に流れたこのニュースにより、ビットコインは同日、2%近く上昇し、4万5540ドルまで値動きをした。ライトコインにあたっては、30%近く上昇し、75.45ドルから225.75ドルに変動した。

このフェイクニュースは、世界的なプレスリリース配信プラットフォーム「GlobeNewswire(グローブニューズワイヤ)」から配信されたものだったという。

信頼性の高いプラットフォームから配信されたプレスリリースということもあり、同日、ロイター通信社やブロックチェーン・仮想通貨における世界最大級のニュースサイトであるCoinDesk(コインデスク)などの大手メディアがニュースとして取り上げた。

ロイタージャパンのニュースのキャプチャ

※REUTERS(ロイター)のウェブサイトに掲載されたニュース

このフェイクニュースに関連するインターネット上の投稿数は以下。フェイクニュースだと判明した翌日の14日に投稿数が増加している。

検索数の推移データのグラフ

※調査概要を基に編集部作成

■調査ツール:TDSE提供のソーシャルアナリティクスツール「Netbase」を使用
■調査キーワード:「ウォルマート」「ライトコイン」 「ビットコン」AND「Walmart」「 Litecoin」「Bitcoin」
■調査期間:9/13~9/20
■取得言語:日本語
※Decahoseとは、ツイートデータの10分の1の母集団のこと。10分の1のデータを実態に近い数値にスケーリング(拡張)して調査。
※その他の仕様は「Netbase」の仕様に準拠

 

信頼性の高いプラットフォームと大手メディアが取り上げたことで、情報を信用した人が多いと想定できる。また、メディアだけなく、著名人もTwitterでツイートし、多くの人が拡散した。

Walter Bloomberg氏のツイート

※32万人以上のフォロワーを持つ、Walter Bloomberg氏のツイートより引用。246 件のリツイート1,151 件のいいねされている(2021年9月24時点)

ロイター社のツイート
※ロイター通信社のツイートより引用。フォロワーも困惑している様子がうかがえる

その後、ウォルマートとライトコインが提携するという情報がフェイクだったということを各メディアや著名人が投稿するも、ライトコインの価格は急騰後に下落。フェイクニュースが原因で情報に敏感な仮想通貨のトレーダーたちが損失を受けることとなった。

インターネットの情報源のグラフ

※調査概要を基に編集部作成

■調査ツール:TDSE提供のソーシャルアナリティクスツール「Netbase」を使用
■調査キーワード:「ウォルマート」「ライトコイン」 「ビットコン」AND「Walmart」「 Litecoin」「Bitcoin」
■調査期間:9/13~9/20
■取得言語:日本語
※Decahoseとは、ツイートデータの10分の1の母集団のこと。10分の1のデータを実態に近い数値にスケーリング(拡張)して調査。
※その他の仕様は「Netbase」の仕様に準拠

ウォルマートとライトコインとの提携に関連するインターネット上の投稿数は、11859件(9/13~9/20集計)。その内の11340件がTwitterでの投稿となっていることから、大手メディアや著名人のツイートが仮想通貨の変動に影響を及ぼしたことは否定できない。

Twitterの新プログラム「Birdwatch(バードウォッチ)」が抑止となるか

炎上の火種や今回のようなフェイクニュースなど、良くも悪くも圧倒的な拡散力を持つプラットフォームであるTwitter。

Twitter社は、増え続ける誤情報の拡散対策として、デマだと思しきツイートを特定し、警告ラベルを表示する機能「Birdwatch(バードウォッチ)」の実装を予定しているという。(Birdwatchに関する記事はこちら

バードウォッチイメージ

※Jane Manchun Wong氏のツイートから引用

Birdwatchが実装されることで、今回のようなフェイクニュースの拡散を抑止することが期待できる。だが、現在アメリカで試験運用中とのことで、日本での実装はもう少し先になりそうだ。

情報発信の前に「ファクトチェック」を

今回の事例で、最も注視すべきは、フェイクニュースであることを世界的なプレスリリース配信会社も大手ニュースメディアも見抜けなかった点である。

ライトコインを大量に売却し、利益を得たい犯人による巧妙な手口だったとはいえ、正しい情報なのかを精査せず、発信してしまったことが大きな問題といえるだろう。

現在、情報や言説が正しいかどうかを精査する方法として「ファクトチェック」が推進されている。ファクトチェックとは、社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化し、正確な情報を共有する「真偽検証」のことである。誤情報はどうかを見極め、正しい情報を発信することが企業の信頼を守るためには重要といえる。

自社でのファクトチェックが難しい場合は、FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)などの専門団体に情報提供し、検証を行うことをお薦めしたい。
 
 
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