2020.12.19

話題の疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)まとめ|オバマ前大統領逮捕/トランプ大統領再選の可能性/新型コロナウイルス感染者に対する誹謗中傷など【11月下旬~12月前半】

本稿は話題になった疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いのある情報)をまとめて紹介する企画である。
オバマ前大統領逮捕やトランプ大統領再選の可能性、新型コロナウイルス感染者への誹謗中傷に関する話題が確認された。概要と検証結果、企業が学ぶべきポイントを解説する。

なお、発行元のデジタル・クライシス総合研究所はファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しており、この記事はFIJのレーティング基準に基づいて作成したものである。

 

話題になった疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)
・バラク・オバマ元米大統領が11月28日にスパイ容疑で逮捕された
・CNNがトランプ大統領再選の可能性を放送
・石川県の感染者第一号は住んでいた町も追われた

 

「バラク・オバマ元米大統領が11月28日にスパイ容疑で逮捕された」

「バラク・オバマ元米大統領が11月28日にスパイ容疑で逮捕された」という情報がSNS上で拡散された事案である。

※「速報:オバマが逮捕された。続報を待て」と記されたツイートのスクリーンショットを貼り、「最高裁長官がまたしても攻撃」という内容を投稿

 

 


※「オバマ元大統領、スパイ容疑で逮捕」といったサイトの記述

 

概要

日付:12月1日
発信者:ナタリア・アントノワ(アメリカ ジャーナリスト)
媒体:Twitter
拡散数:Twitterで2,305RT(日本のインフルエンサーによる投稿の拡散数)
内容:「元アメリカ大統領のバラク・オバマは11月28日、極秘部分を含む情報を中国情報当局の幹部に伝達しようと、元CIA局員のビジネスパートナーと共謀したとして逮捕された」と伝えるカナダの「コンサーバティブ・ビーバー」のサイトをリンクに張ったTwitterが拡散

 

検証結果

【検証】「バラク・オバマ元米大統領が11月28日にスパイ容疑で逮捕された」というtweetは虚偽

ファクトチェック・調査報道サイトBellingcatの編集者などを務めてきたジャーナリストであるナタリア・アントノワ氏は「最高裁長官がまたしても攻撃」との内容に、「速報:オバマが逮捕された。続報を待て」という投稿のスクリーンショットを張りつけ投稿。

カナダの情報サイト「コンサーバティブ・ビーバー」では11月28日、極秘部分を含む情報を中国情報当局の幹部に伝達しようと、元CIA局員のビジネスパートナーと共謀したとして、元アメリカ大統領のバラク・オバマが逮捕されたとしている。

さらにアメリカ裁判所が報道を禁じたためにアメリカ国内では報じられていないとした。しかし、どの捜査機関がどこで逮捕したのかなどの詳細については一切触れられていない。

アントノワ氏自身はサイトの内容は単なるジョークとして引用しただけで、広告収入狙いのサイトであるコンサーバティブ・ビーバーの情報は信用に値しないと自らつけたレスで説明している。

アントノワ氏がジョークとして引用したスクリーンショットは、「宇宙人とUFOは実在する」といった内容の著書がある人物で、自称「元米海軍」とのこと。この人物はオバマ氏逮捕と投稿しているもののその根拠は示していない。

この投稿は、アメリカはもちろん日本のSNS上でも出回り、紹介したインフルエンサーの多くは当初から「要確認」や「真偽不明」と注釈をつけていた。日本のSNSでは11万人フォロワーを有するインフルエンサーが投稿したこともあり、2,305件ものリツイートがなされている。

 

疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)に対する編集部考察

センセーショナルなニュースは拡散されやすい。
大統領選直後のアメリカでは大統領問題にも敏感になっており、内容についても当初から疑問符をつけるインフルエンサーが多かった。

なお、オバマ前大統領本人は日本時間の12月2日に自らが立ち上げた「オバマ財団」にて活動内容を投稿しており、自由に過ごしていることがうかがえることからも、逮捕の情報は虚偽であることが明らかである。

多くのフォロワーを持つインフルエンサーが拡散することで内容の真偽に関わらず、あたかも事実であるかのように流れてしまうのがTwitterの特徴でもある。情報に踊らされないためには、ビッグニュースを目の当たりにしてもまずは一呼吸おいてみる必要があるだろう。

 

「CNNがトランプ大統領再選の可能性を放送」

CNNがアメリカ大統領選においてトランプ大統領再選の可能性を報じている動画がTwitter上で拡散された事案である。

 

概要

日付:11月27日
発信者:「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表
媒体:YouTube(Twitter)
拡散数:Youtube:24万回再生(Twitter:2,039RT)
内容:沖縄を拠点に活動する「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」の代表によるライブ配信の中で「ブラックフライデーパニック」と題するネット記事を紹介しながら「CNNがブラックフライデー(11月27日)にトランプ氏勝利の可能性を放送した」と発言。

代表は今回のアメリカ大統領選に際して渡米、YouTubeやSNS上で情報発信を行っており、この動画を別の政治評論家がTwitterで引用したことからさらに拡散を見せている。

 

検証結果

【検証】「CNNがトランプ大統領再選の可能性を放送」はミスリード

拡散している動画は大統領選前の9月に放送された内容であり、トランプ氏が負けた場合に取りうるシナリオを「予測解説」したものである。アメリカにおける大統領選は、一般有権者・選挙人と2段階で投票が行われるが、そのスケジュールは11月3日に一般有権者投票・12月14日に選挙人投票となっている。

一般有権者投票で州ごとの勝敗を決め、各州に割り当てられた選挙人は一般有権者の投票により勝った方に投票する仕組みだ。それでも勝敗がつかない場合は下院が大統領を選ぶことになり、トランプ氏が再選するには下院の過半数である26票を取得する必要がある。

CNNでは投票が始まる前の時点でこういった複雑な制度の仕組みや、それに伴う様々な可能性を解説した内容の放送を行っただけであり、一般有権者の投票が済んだタイミングでトランプ氏の再選の可能性を報じたわけではない。

代表が動画内で紹介したものは、CNNで制作された放送内容そのものでなく、アメリカで拡散していた保守系サイト「Gateway Pundit」でまとめられたネット記事である。この記事はアメリカ国内でも拡散されているが、このサイトは、多くのアメリカメディアから誤情報の拡散起点になっていると指摘されている。

 

疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)に対する編集部考察

国内外から多くの関心を集めているアメリカ大統領選をめぐっては、ネット上に大量の情報が拡散されている。それらはちょっとした切り取りで誤情報になり、ミスリードとなるうるため、扱う際には精査が必要だ。この事案についてはCNNという大手メディアが報じたことが拡散に拍車をかけたと推測できる。

CNNはかねてより反トランプ姿勢を取っていたため、トランプ氏再選の可能性を放送したことは驚きとともに信頼性の高い情報ととらえられた。同じ内容であっても文字だけの情報に比べ、動画は認識しやすいため、ひとたび注目を集めれば瞬く間に拡散されてしまう。

結果的に正しい情報が埋もれてしまい人の目に触れることがなくなるという事態になってしまうため、被害に遭った企業は迅速な対応が必要になるだろう。

 

「石川県の感染者第一号は住んでいた町も追われた」

石川県において新型コロナウイルス感染者第一号となった人が、噂が広がり町を追われてしまったという情報がTwitter上で拡散された事案である。

 

概要

日付:11月28日
発信者:匿名
媒体:Twitter
拡散数:Twitterで7,275RT
内容:石川県で新型コロナウイルス感染者第一号となった人が町内で回覧板を回されて噂が広がり、住んでいた町を追われてしまったという情報をタクシーの運転手から聞いた発信者が投稿し拡散した。

 

検証結果

【検証】「石川県の感染者第一号は住んでいた町も追われた」は誤り

発信者は東京から石川県に訪れた際に利用したタクシーにて、運転手との会話する中で「東京はコロナ大変でしょう、石川県の感染者第一号は”仕事で”東京へ出張して感染したらしくてね。住んでいた町も追われてしまった。町内で回覧板を回されて、噂が回ったらしい。流石にどうかと思いますわな」と言われ、東京よりも石川県の方が大変だと投稿。

特にメディアなどに取り上げられたわけではなかったが、発信者のフォロワー数が多かったことからTwitter上で拡散した。

リプライにはそれはデマであるとの情報が多く寄せられ、中には本人の知り合いだという人から、引っ越しはしておらず、子どもがいじめに遭う、生卵をぶつけられる、壁に落書きをされるなどの嫌がらせを受けたといった噂もすべてデマであるとの情報も入った。

また、本人に直接取材した石川県のローカル誌にはこれらの噂がすべてデマであるとの記事が記載されていたとの情報も寄せられたが、ネット記事にはなっておらず、確証は得られないが複数の「本人の知り合い」から寄せられた情報を総合するとタクシーの運転手が出所不明の噂話を事実と思い込み乗客に話したか、または創作だった可能性が強い。

 

疑義言説(フェイクニュース・デマ情報の疑いがある情報)に対する編集部考察

世界中で蔓延している新型コロナウイルスは接触や飛沫で感染するため、感染者との接触を避けることが一番の対策となっている。そのため、都道府県ごとに感染者の把握と情報発信を行っていることから感染者が戦犯扱いになる事態も起きているのが現状だ。とかく、「感染者第一号」は標的になりやすく、誹謗中傷によって実際に引っ越しを余儀なくされた例もある。

今回の石川県「感染者第一号」に関しては実際に町を追われるような事態にはなっていないため、この情報は誤りであると言え、発信者もTwitter上に寄せられた情報により事実でないことを理解している。聞いた話として投稿した情報が特定の個人や、特定の地域の住民を批判するような流れになることは珍しくない。たとえそれが発信者の意図しない流れであっても拡散した後では修正が難しいということを念頭に置く必要があるだろう。

 
 
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編集部

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